中国が56%減っても、訪日客はほぼ減らなかった。この数字、他人事じゃない気がする

じゃらんリサーチセンター(JRC)が7月から開催している「観光振興セミナー2026」で、こんな数字が発表されていた。

2026年1〜5月の訪日外客数は、前年同期比でわずか1.1%減。ほぼ横ばいだ。ところがその内訳を見ると、中国だけが前年同期比56.2%減という、かなり大きな落ち込みを見せている。

普通に考えたら、これだけ落ちれば全体もそれなりに沈むはずだ。でも実際はそうならなかった。台湾が22.3%増、韓国が20.6%増、アメリカが8.2%増、タイが4.5%増、豪州が4.2%増と、中国以外の市場が軒並み伸びて、その穴を埋めてしまっている。

「一つの市場が落ちても、全体は落ちない」構造

この発表では、アジア圏は直行便の増加、欧米圏は円安による割安感が、それぞれの伸びの背景にあると説明していた。要するに、複数の国からそれぞれ違う理由で人が来ている、ということだ。

2025年通年で見ても、訪日外客数は4268.4万人と過去最高を記録し、韓国・中国・台湾など主要な国籍がすべてプラス成長だった。この「複数の市場が同時に、別々の理由で伸びている」状態こそが、2026年に入って中国が大きく落ちても全体が崩れなかった理由なんだと思う。

一つの巨大な市場に依存していたら、今回のようなことが起きた時にまともに数字が沈んでいたはずだ。市場が分散していたからこそ、吸収できた。

都市への集中は、まだ根強い

一方で、気になる数字もあった。外国人延べ宿泊者数は全体で伸びている一方、三大都市圏(東京・神奈川・愛知・大阪・京都・兵庫・埼玉・千葉)のシェアは66.3%で、前年より2.8ポイント下がったとはいえ、まだ3分の2をそこが占めている。

地方への分散はまだ「兆し」の段階で、大部分は変わらず都市部に集中している。JRCの分析では、地域ごとに「拠点・ゲートウェイ」「ルート伸びしろ」「宿泊・高消費」などタイプが分かれていて、それぞれ取るべき打ち手が違うという整理がされていた。全部の地域が同じやり方で外国人観光客を呼び込もうとしても、たぶんうまくいかない。

自分の地域・自分の立ち位置がどのタイプに近いのかを見極めてから動く、という当たり前のようで見落としがちな順番の話だと思う。

この話を読みながら、結局これは観光の話に限らないな、と思った。
一つの取引先、一つの商品、一つのやり方に頼りきっている状態がないか——たまにはこういう外部のデータを眺めながら、自社の依存構造を点検してみるのも悪くないなと思う。


※本記事は、観光経済新聞に掲載された「中国市場56%減を他国が補う、訪日旅行の『市場多様化』が鮮明に JRC松本研究員が関東・甲信越の地域別ルート傾向を分析」(2026年8月20日)をもとに執筆しています。
出典:観光経済新聞

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