名古屋商工会議所が2026年9月に発表した「第58回定期景況調査」を読んでいて、自分にも刺さる数字があった。
コスト上昇分に対して「価格転嫁をした」と答えた企業は79.5%。前年同期比で6.7ポイント上がっている。数字だけ見れば、値上げの流れはかなり進んでいるように見える。
でも、その内訳を見ていくと、話はそう単純じゃない。
業種・規模によって、景色がまったく違う
価格転嫁の実現状況を業種別に見ると、卸売業は93.1%とほぼ全社が転嫁できているのに対し、サービス業は66.2%にとどまっている。企業規模別でも、大企業87.2%に対して小規模事業者は74.4%と、10ポイント以上の差がある。
同じ「値上げの春」を迎えているはずなのに、立場によって進み方がまるで違う。ここでいう「サービス業」「小規模」は、まさに僕たちのような会社が属するカテゴリーでもある。
転嫁できない理由の1位は、交渉力の問題じゃなかった
ここからが、今回一番印象に残った部分だ。
価格転嫁が進みにくい要因を聞いた設問で、断トツの1位(40.8%)になったのは「受注減少をおそれて転嫁に踏み切れない」だった。2位の「合意しても単価への反映に時間がかかる」(19.6%)や「交渉の場が定期的に設けられていない」(19.0%)を、大きく引き離している。
つまり、値上げが進まない一番の理由は、相手に断られた、交渉が決裂した、という「実際に起きたこと」ではなく、「受注が減るかもしれない」という、まだ起きていないことへの恐れだった。
聞く前に、自分で答えを決めてしまう
これを読んで、正直ちょっと耳が痛かった。
僕たちも見積もりを出すとき、「この金額を出したら高いと思われるかもしれない」「他社に流れるかもしれない」と、相手に聞く前に自分の中で答えを決めてしまうことがある。断られるのが怖いから、確認する前に諦めてしまう。今回のデータが示しているのは、これがどうやら僕たちの会社だけの話ではなく、多くの企業に共通する構造だということだ。
本当に受注が減るかどうかは、相手に聞いてみないと分からない。なのに、聞く前の「たぶんこうだろう」という予測だけで、行動そのものを止めてしまっている。これはコストの話であると同時に、意思決定のクセの話でもあるんだと思う。
僕たちがInsight Creativeで大事にしているのも、結局この「聞く前に決めつけない」という姿勢だ。値上げに限らず、新しい提案や施策を止めてしまう理由の多くは、根拠のある反対ではなく、確かめていない不安だったりする。
一度、自分の頭の中にある「きっとこうだろう」を、実際に確かめてみる。それだけで、動けなかったことが動き出すかもしれない。
※本記事は、名古屋商工会議所が2026年9月11日に発表した「第58回定期景況調査(2026年7〜9月期)」をもとに執筆しています。
出典:名古屋商工会議所「景況調査」ページ
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