名古屋は101位へと大きくRanking DOWN!あれ、この順位、ほんとうに急落!?

はじめに:名古屋市、56位から101位へ

先日、ニュースサイトで「自治体ブランドランキング2026」を紹介する記事を見かけた。毎年発表されているランキングで、今年の1位は2年連続で石川県金沢市。
名古屋はどうだ?そう思って順位表をたどってみると、名古屋市は昨年の56位から101位へ。え、トップ100どころか、急落じゃん!?今年はアジア・アジアパラ競技大会があり、競技場やコンサート施設も充実してきたはずなのに。

集計方法の変更で説明できるのは、45位のうち3位分ほど

今年のランキングには、ひとつ大きな変更がありました。昨年まで東京23区はまとめて1自治体として集計されていたところ、今年から区ごとに分けて集計された模様。

渋谷区や港区などがランキングに入ってきて、名古屋が押し出されたのでは?ところが順位表を見ると、名古屋より上にいる区は3つだけ(ちなみに、渋谷区も港区も150位圏外でした)。

  • 世田谷区(59位)
  • 文京区(91位)
  • 品川区(95位)

なお昨年、東京23区全体は139位。もともと名古屋より下でした(それはそれで驚きですが…)。つまり集計変更で名古屋が押し下げられたのは、多く見積もっても3位分程度だったのです。じゃあ残りの約40位分は、どうなった?

名古屋市の今年の数値を見てみる。ブランド偏差値71.0、認知率90.0%、イメージDI 23.3%。ちなみに、DI(Diffusion Index)とは、「良いイメージがある」と答えた人の割合から「悪いイメージがある」と答えた人の割合を引いた数値のこと。名古屋市の場合は、31.8%から8.5%を引いて23.3%になる(発表資料の表記に合わせて、この記事ではDIも%で表記)。目を引くのは「悪いイメージがある」の8.5%で、公表された150位までの自治体の中で最も高い値(これもこれで、問題では)。

一方で「訪れたことがある」は53.8%。なんと、1位の金沢市(42.3%)を上回っている。よく知られ、よく訪れられているのに、好かれ方が追いついていない。名古屋の数字からはそんな情けない姿が見えてきます。

中位の順位は、わずかな点差

では、残りの約40位分は「ブランド力の急落」なのか。ここで順位ではなく、点数(ブランド偏差値)を見てみる。

順位自治体ブランド偏差値
1位金沢市109.4
10位神戸市97.5
50位志摩市78.9
56位逗子市77.9
100位石狩市71.1
101位名古屋市71.0

上位10位の間には約12点の差があるけど、50位から100位までの50自治体は、わずか7.8点の幅に収まっている。中位の自治体はひしめき合っていて、数点動くだけで順位は数十位単位で変わる。

そして、もうひとつ見ておきたいのが調査の誤差。

どんな調査にも誤差はあり、それ自体は調査の欠点ではありません。この調査も各自治体の回答者は約1,000人と、十分な規模。ただ、気をつけたいのは、比べている差がより小さいときのこと。中位の自治体は数点の中にひしめいているので、ここでは誤差の影響がそのまま順位に出てしまう。

概算にすると、名古屋市のイメージDI(23.3%)は、聞き直すたびにおよそ20%〜27%の間で揺れる可能性がある。偏差値にすると、71.0から上下に4点ほどの幅。これを順位表に当てはめると、名古屋市の「本当の位置」は70位前後から130位台までのどこか。随分、広い範囲です。101位という数字は、その中のひとつの点にすぎない。

また「偏差値」は、その年の全自治体の中での相対的な位置を示す数字です。昨年と今年で比べる対象が変われば、同じ評価でも値は変わるはず。

では、実際の数字は昨年からどう変わったのか。過去2年分の発表資料から、名古屋市の数値を並べてみます。

年全国順位認知率良いイメージ悪いイメージイメージDI
2024年96位88.5%30.2%14.5%15.7%
2025年56位89.7%35.6%7.7%27.9%
2026年101位90.0%31.8%8.5%23.3%

昨年と比べると、イメージDIは4.6ポイントダウン。主な理由は「良いイメージ」が3.8ポイント減ったこと。ただ、2つの年を比べる場合の誤差は±5ポイント程度あり、この差はほぼその範囲に収まります。

さらに2年前までさかのぼると、名古屋市は96位。「悪いイメージ」は14.5%もありました。2024年と比べれば、今年の数字はむしろ大きく改善しています。あれれ、昨年の56位のほうが「上振れ」だった、という見方もできるな…

なぜ賃貸住宅の会社が「ブランドランキング」を出すのか

そもそも、「いい部屋ネット」と自治体のブランド力は、すぐには結びつかない。いい部屋ネットは賃貸住宅ブランドのはず。

このランキングの副題は「街の住みここちランキング特別集計」。大東建託は毎年、18万人規模の居住満足度調査を行い、「住みここちランキング」「住みたい街ランキング」を発表していて、自治体ブランドランキングは、その調査の一部の設問を使って作られた派生ランキングのようです。

ただ、「自治体のブランド力を測って何に役立てるのか」は、発表資料にはっきり書かれていない。ここからは個人的な見立てだけど、このランキングには企業の広報・コンテンツマーケティングとしての役割が大きいと考える。

  • 毎年ニュースになる:「〇〇市が1位」「△△市が急上昇」は、メディアが取り上げやすい話題。
  • 地域ごとに露出できる:全国版のほかに、東海版・甲信越版など地域別版も発表される。それぞれの地元メディアに取り上げてもらえる。
  • 調査資産を何度も使える:一度集めた大規模データから、複数のランキングを生み出せる。

その結果、「いい部屋ネット」の名前は、さまざまな人の目に毎年触れることになる。データを使った広報として、非常によくできた仕組みだ。

「順位」は伝わりやすく、誤解されやすい

ランキングが広報に強いのは、順位がひと目で伝わるから。しかし、その分かりやすさが誤解を生むことも。順位は点数の差を隠し、誤差の幅を隠し、集計方法の変更も隠してしまうから。

実際、大東建託の発表資料には、23区を分けて集計したことがきちんと注記されていました。でも、注記は順位表の下の一文にとどまり、今回見たニュース記事では、抜け落ちていました。誰かが隠したわけではないでしょう。ただ、伝言ゲームの途中で情報が削られていったのだと。

ランキングで名指しされるのは実在の自治体。「名古屋、45位ダウン」という見出しは、そこに住む人や、街の魅力づくりに取り組む人にとって、軽い話ではないのかな。

おわりに:ちょっとモヤモヤが残るけど

ここまで見てきたように、名古屋市の101位は、ブランド力の急落を示しているとは言い切れない気がします。とはいえ、まだちょっとモヤモヤが残ります。

ちなみに、今回の調査は2026年2〜3月に行われていて、アジア・アジアパラ競技大会よりも前です。来年の調査には、大会の効果が数字に表れるかもしれません。

クリエイティブやマーケティングに携わる僕たちは、データを伝わるコンテンツに変える仕事をしています。数字を分かりやすくすることと、数字を正しく伝えることは、ときにぶつかります。その両方をデザインすることが、データを扱う側の責任だと考えています。

ランキングに関わる三者それぞれにできることがあるなと思いました。

  1. 発表する側:集計方法の変更など順位に大きく影響することは、できれば注記ではなく本文で説明する方が望ましい。順位だけでなく、点数の幅や誤差の目安も添えると親切。
  2. 伝えるメディア:順位の上がり下がりだけを切り取らず、注記や算出方法も一緒に伝える。他者のデータを引用するときのマナーでもある。
  3. 読む側:順位だけを見て、切り取られた情報をそのまま信じる前に、「本当にそうなのかな?」と少し疑ってみる。そんなひと手間も、ときには必要。

モヤモヤは残ったままです。さて、来年のランキングで名古屋はどうなるのかな?


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